3 北海道産大豆の需給状況
 北海道産大豆について、入札取引結果、統計資料、道内の農協、大豆取扱事業者等関係者からの聞き取り等により、その需給状況を取りまとめた。
 
  3-1 北海道における大豆生産
   国産大豆の供給において北海道産大豆は、大きな位置を占める。
 都道府県別生産量で見て北海道は最大の産地であり、近年、その地位を高めてきた。全国の
大豆作付面積に占める北海道のシェアは、1990年代前半には10%前後であったが、最近は、20%弱程度に高まっている。[3-1]
 北海道は大豆栽培の北限に位置し、作柄の不安定さが懸念される。しかしながら、近年、作柄
変動はあるものの、平均単収は、全国平均を大きく上回って推移している。[3-2]
 大豆は、全国的には水稲の生産調整に伴う転作作物としての栽培が太宗を占めるが、北海道においては畑作農業における輪作としての豆類の作付けの中で大豆が作付けられる場合と水田に
おける転作作物として作付けられる場合があり、近年では、作付面積に占める水田作面積が6割
程度となっている。[3-3]
 北海道では、水田転作作物として小麦が多く作付けられるが、連作障害の抑制のためにも小麦の後に大豆が作付けられる。大豆の収穫は秋まき小麦播種時期より遅い10月になるため、従来、大豆後に秋まき小麦を作付けできなかったが、最近では、大豆後に春まき小麦を播種する「初冬播き」や大豆収穫前の条間に秋まき小麦を播種し、大豆−小麦を交互に作付ける技術が普及している。
 大豆作付面積を煮豆・豆腐・みそ等一般的な用途に仕向けられる大粒・中粒銘柄(黒大豆を
除く。)、納豆に仕向けられる小粒銘柄、黒大豆の3区分に区分してみると、黒大豆については年産による変動が大きい。また、最近年では、納豆用の小粒銘柄が増える傾向にある。[3-4] [3-1]
   
  3-2 とよまさりの動向
   大粒・中粒銘柄のうち、産地品種銘柄「北海道とよまさり」とその他に区分してみると、最近では、北海道とよまさりが9割を占めるようになっている。[3-2]
 北海道とよまさりは、白目を特徴とする複数の品種で構成される品種群銘柄である。[3-3]
 とよまさり銘柄の作付面積を品種別にみると、以前は最も多かったトヨムスメの作付けが後退し、平成13年産から作付けされるようになったユキホマレの作付けが急激に拡大し、最近では6割以上を占めるようになっている。[3-5] [3-4]
 ユキホマレの急速な普及は、早熟、コンバイン収穫に適応していること、病害抵抗性があること、
多収であることと生産者にとって有利なこと、また、農産物検査において上位等級に格付けされ
やすく、その結果、戸別所得保障制度による交付金についても有利なことが要因としてあげられる。
 入札取引の実績をみると平成21年産及び22年産では、トヨムスメについては、落札率が6割程度となったが、他の品種については1割程度であった。これは品種によって需給バランスが異なって
おり、特に豆腐原料となるトヨムスメについては供給が減少する中で根強い需要があることが見て
取れる。[3-5]
 このような状況は、需要者側のニーズが生産者側に十分認識されていないきらいがあることを
示すものといえる。
 入札取引の結果に関して、とよまさりについては、構成品種別の入札状況、価格形成状況に
関する情報を提供する必要があると思われる。
 豆腐原料として実需者から供給期待が大きいトヨムスメが生産者側からは、とよまさりの太宗を
占めるユキホマレに比較して作りにくいという問題に関しては、これに代替する新品種として道立
十勝農試で育成された「十育249号」が期待されている。白目の大〜中粒品種で研究実績では豆腐としての加工適性に優れているとされている。今までのところ、試験場での試作に限られていたが、平成24年産から農家圃場での試作が開始されることとなっており、数年後には、一般に作付けできるようになる。
   
  3-3 スズマル・ユキシズカの動向
   納豆原料の代表的銘柄としてスズマル及びユキシズカがある。これに茨城納豆小粒を加えた3
銘柄が納豆用原料として全国的に供給されている大豆である。
 これら納豆用銘柄については、平成19年産(2007年産)取引において需要の高まりが見られ、一時的に価格が上昇する状況があったが、平成20年産以降は一転して低調な取引が続いている。
3-6] [3-7]
 平成19年産大豆の価格上昇は、冷凍餃子事件に始まった中国食品への不信をきっかけに高まった消費者の国産志向が背景にあると思われる。
 その後、国産小粒、極小粒大豆に比較して価格が安い中粒の国産大豆を原料とする「中粒(ちゅうつぶ)納豆」が新たな商品として開発・販売されるようになった。
 小粒、極小粒銘柄の大豆は、納豆用以外の用途に転用することが難しいため、売り手としては
供給先の需要に対応して生産する契約栽培取引を推進している。このようなことから、平成20年産以降の入札取引は、月によっては落札実績がないことも多く、低調な状況が継続している。[3-6]