4 国産大豆需要開発の可能性
 国産大豆の用途別仕向け量は、豆腐用が最も多く、約6割、次いで、煮豆・惣菜、納豆、みそ・
しょうゆ等とされるが、その他の用途としてきな粉、煎り豆、豆乳がある(1割程度)[4-1]
 このうち、煎り豆と豆乳に関し、国産大豆利用拡大の可能性を検討することとし、煎り豆については、製造・卸業者から、豆乳については業界団体から聞き取りを行い、関係資料と併せて現状について
取りまとめた。
 
  4-1 大豆煎り豆
   大豆煎り豆は、主に節分の豆まき用の豆として販売されている。都内での販売状況を観察すると、節分を迎える1月頃には、どこの量販店、コンビニでも売られているが、落花生の煎り豆のように通年的に店頭に並んでいる訳ではなく、専門店である乾物店では売られているものの、量販店の店頭で売られている例は希である。 都内で大豆煎り豆の製造、卸を行っているA社から聞き取り調査を
行った。
 
    4-1-1 原料について
     大豆煎り豆は、主に節分の豆まき用の豆として販売されている。都内での販売状況を観察すると、節分を迎える1月頃には、どこの量販店、コンビニでも売られているが、落花生の煎り豆のように通年的に店頭に並んでいる訳ではなく、専門店である乾物店では売られているものの、量販店の
店頭で売られている例は希である。 都内で大豆煎り豆の製造、卸を行っているA社から聞き取り
調査を行った。
      国産100%使用
      最近は、主に東北産大豆を使っている。
      青森産おおすずを使ってきたが、平成23年産は、原発問題でミヤギシロメを避けて青森
おおすずを求める動きが出てきた。落札価格も上昇し、困っている。
      ここ数年、煎り豆として使われることが多い北海道産大豆の供給が潤沢で、価格も6,000円台で商売がやりやすかった。
      煎り豆用大豆の需要は、2,000トン台程度で小さいマーケットだが、他の大豆製品の原料調達の影響をもろに受ける。例えば、数年前、「男前豆腐」が北海道産大豆使用をアピールして
とよまさりを大量に買い付けたため、大変影響を受けた。
      北海道産では、ユキホマレは、皮が薄く、破れやすいので使いにくい。トヨムスメの方が使い
やすい。
      音更大袖振は、大変おいしい煎り豆ができる最高の原料である。
      黒大豆では、北海道産光黒は、使いやすい。丹波黒は、皮が破れやすく、加工しにくい。
      エンレイを使う業者もいる。「エンレイ」という名前のイメージがよいようだ。
      フクユタカは茶目なので、余り使わない。白目大豆を使う。タチナガハも使いにくい。
         
    4-1-2 製造技術
    (食感が硬めの製品とサクサクした感触の製品があるが)
      豆を浸水してから、鉄板の上で焙煎する場合と熱風で焙煎する場合とがある。鉄板で焙煎した場合は堅い感触になり、熱風の場合は、軟らかい感触になる。当社は、熱風焙煎である。
      原料は、問屋で選別したものを仕入れ、更に選別して使用する。色彩選別機を使うが、紫斑粒等裏側に着色があれば除去できないので、手選別も行う。
         
    4-1-3 需要拡大の可能性
    (大豆煎り豆は、節分の時期には、スーパーやコンビニの店頭に並ぶが、時期を過ぎると売られる
ことが少ないが、ナッツの一つとしてもっと売ることはできないか)
      大豆の煎り豆は、どうしても節分豆が主体である。当社は、豆菓子としては、エンドウ豆等も
扱っている。
      豆菓子は、関西等西日本でよく食べられ、業者も関西に多い。
      大豆煎り豆は、健康イメージはあるが、味が淡泊で落花生やナッツ類のような味にコクが
あるものの方が好まれるのではないか。
      コンビニは、POSシステムで売れ行きを把握して管理するので、売れなければ、撤去されて
しまう。
      豆菓子は、最近、女性に人気があり、当社も1階に売り場を設けているが、近くの会社の
OLが昼食時に立ち寄って買い求めることも多い。
      最近、フランス料理のシェフが女性をターゲットに豆菓子の専門店を開き、話題になった。
         
  4-2 豆乳
   豆腐製造においては豆乳ににがりを添加して豆腐を製造する。豆乳は大豆から抽出されるが、
豆乳を豆腐として利用するのではなく、豆乳そのものを飲料とすることは、我が国ではかつては一般的ではなかった。しかし、最近では量販店の食品売り場で乳製品と並んで紙パック入り豆乳製品が売られている。
 豆乳生産量は、近年増加傾向にあり、豆乳原料用大豆使用量は、農水省の推計によれば、平成
23年において34千トンとなっている。[4-1]
 豆乳原料大豆は、主に外国産が使用されているといわれるが、国産大豆の可能性について検討することとし、豆乳メーカーの団体である日本豆乳協会から聞き取りを行った。 (日本豆乳協会:加盟
7社、市場シェア8割)
 
    4-2-1 豆乳消費の増加傾向の背景
     近年、消費者の健康志向から豆乳消費が伸びている。メーカーが消費者の嗜好にあった飲み
やすい豆乳の開発を行ってきたことも見逃せない。健康ブームで消費が伸びてもおいしくなければ、
ブームは長続きしない。[4-1]
 
    4-2-2 おいしい豆乳
     豆乳を飲用として飲む場合、原料大豆のたんぱく質含量は、9%台が限界で、国産大豆のように12%となると飲みにくくなる。 飲み方によっても豆乳の品質は異なる。日本では、豆乳は冷蔵庫で
冷やしたものをそのまま飲むのが普通だが、韓国では、常温保存されたものを加熱して飲むのが普通で、飲み方の違いで品質も異なる。
 
    4-2-3 豆乳原料としての国産大豆の可能性
     消費が伸びていると言っても豆乳の市場は、極めて小さい。豆乳原料としての大豆の数量は、約25千トン、そのうち、国産大豆は、4~5千トン程度だろう。約7千万トンの北米大豆から豆乳原料としての品質に適合したnonGM大豆を契約栽培取引で調達することは容易であるが、国内産地が
メーカーの要求に適合した品質の大豆を安定的にメーカーが受け入れられる価格で供給することはかなり難しいと思われる。 国産志向や地産地消にこだわる消費に対応してM社やF社が求め
やすい価格で国産大豆豆乳を販売している。大変飲みやすい製品が提供されている。豆乳原料としての国産大豆の市場を開拓するなら、相当の覚悟で取り組む必要があるだろう。
 
    4-2-4 諸外国での豆乳消費
     欧米では、近年豆乳の消費量が増えており、米国の1人当たり消費量は、日本より多い。これは、コレステロールを下げる等消費者の健康志向を反映したものである。[4-2]
 東南アジアでは、日本より遙かに多いが、これは所得水準が低く、高価な牛乳を求めることが難しいため、牛乳の代替食品として豆乳の消費が多いことを反映している。
 
    4-2-5 豆乳カフェ
     シンガポールの豆乳ドリンクチェーン「Mr Bean(ミスタービーン)」が2010年1月に国内1号店を渋谷にオープンした。オーナーは、シンガポールで50店を展開しているが、日本で100店を目指している。 この店の場合、豆乳を仕入れて提供するのではなく、原料大豆から店のバックヤードで豆乳を抽出して絞りたての新鮮さにこだわっている。
 
    4-2-6 豆乳に関する統計
     農水省で調査している。この統計には、町の豆腐店が販売している豆乳は含まれていない。